脳腫瘍外来とは
あづま脳神経外科リハビリクリニックの脳腫瘍外来では
- 麻痺やしびれ、言葉障害や視野障害、頭痛や吐き気、どことなく様子がおかしいなどの症状が徐々に生じ、様子を見ていても治らない場合は脳腫瘍の可能性があります。すでに内科や精神科で認知症や精神疾患の診断がついている場合もあります。
- 偶発的に脳腫瘍が見つかった場合は当院で経過観察できる場合もありますが、症状が出ている方は連携病院もしくは希望される病院へ紹介し治療を受けて頂く必要があります。
- 手術したにも関わらず症状が遺残した場合や後遺症が残った場合、当院では回復期・維持期リハビリを行っています。
- 術後に再発していないか、残存腫瘍が増大していないかなどの定期・臨時検査も可能です。
- 2018年~2022年の5年間で、当院から脳腫瘍のために病院に紹介した方は57名です。2022年は合計173人の方を病院に紹介していますが、そのうち脳腫瘍は16名でした。
脳腫瘍とは
脳に発生する腫瘍は大きく分けて、脳実質に発生する悪性腫瘍と、脳実質以外の部分に発生する良性腫瘍の2種類があります。
脳実質(つまり、脳組織そのもの)に発生する主な腫瘍には神経膠腫や中枢神経系悪性リンパ腫があり、これらはMRI検査だけでは鑑別が難しいため、手術で病理組織を確認することで確定診断されます。脳実質に発生する腫瘍はその構造が脳組織に似ているため、脳組織を浸潤するように拡がり同化しています。その結果、これらの腫瘍を完全に摘出することは困難であり、一般的には悪性腫瘍と分類されます。
一方で、脳実質外に発生する主な腫瘍には髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫があります。これらは脳組織とは異なる性質を持つために同化しにくく、摘出可能でそのほとんどが良性腫瘍と分類されます。
さらに、転移性脳腫瘍があります。原発巣は、約60%が肺がん、約16%が消化器系がん、約11%が乳がんです。転移性脳腫瘍は他の臓器から脳へ転移しているので、原発巣を治療することはもちろんですが、全身的な治療も必要です。
組織名 | 悪性度 | 割合 | |
---|---|---|---|
1 | 神経膠腫 | 脳実質内腫瘍で主に悪性腫瘍 | 25.5% |
2 | 髄膜腫 | 脳実質外腫瘍で主に良性腫瘍 | 23.9% |
3 | 転移性脳腫瘍 | 17.4% | |
4 | 下垂体腺腫 | 脳実質外腫瘍で主に良性腫瘍 | 16.8% |
5 | 神経鞘腫 | 脳実質外腫瘍で主に良性腫瘍 | 8.6% |
6 | 中枢神経系悪性リンパ腫 | 脳実質内腫瘍で主に悪性腫瘍 | 4.9% |
また、脳腫瘍も組織学的に良性と悪性に区別されますが、臨床的な現場では腫瘍が発生している場所も重要な要素となります。
例えば、腫瘍が脳の表面に位置しており、手術によって容易に取り除くことが可能な場所にある場合、その腫瘍が悪性であっても根治的な治療が可能な場合があります。一方で、脳の深部や脳幹に近い位置にあり、脳主幹動脈や大きな静脈を巻き込んでいる場合は、その腫瘍が良性であっても、完全な摘出は困難となるため、根治は不可能です。
さらに、胃や腸のような器官は「消化吸収する器官」として全体で1つの機能を担当しているため、根治目的に余白を多くとって摘出することが可能です。しかし、脳は分業体制で各部位ごとに特化した機能を担っているため、余白をとって摘出することが多くの場合で困難です。その結果、悪性脳腫瘍の治療では、生存期間を延ばすことよりも、手術によって喪失する機能を最小限に抑えるような手術を目指すこともしばしばです
脳腫瘍の症状は?
脳の疾患は「どこで何がいつ起きたか」によって、現れる症状が異なります。
運動神経が通る部位に脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、てんかんが生じた場合、半身が麻痺して呂律困難になることがあります。右前頭葉の病気では左半身が麻痺しますが、失語症などの高次脳機能障害は稀です。左前頭葉の病気では右半身が麻痺し、失語症などの高次脳機能障害が現れます。
また、原因疾患によって経過も異なります。
脳梗塞や脳出血などの脳卒中は突然発症しますが、脳腫瘍は悪性であっても徐々に症状が出現することが多いため、患者さんは麻痺している事に気づかないで、つまずく事が増えただけだと感じていることがあります。
右前頭葉の脳腫瘍の場合、初期症状はほとんど現れないことが多く、腫瘍が一定の大きさに達し、周囲の脳組織が腫れて初めて症状が表れます。そのため、腫瘍がある程度大きくなってしまってから病院を受診するケースが多くなります。しかも、その症状は「なんとなく様子がおかしい」「物忘れが悪くなっている」程度で、他の病院の精神科や内科で認知症と診断されている場合も少なくありません。
このように、脳腫瘍や脳の疾患は「どこで何がいつ起きたか」によって、現れる症状が異なるため、症状は多種多様です。脳に関する何らかの症状を自覚された場合、MRI検査を受けた方が良いでしょう。早期発見と適切な治療が重要となりますので、気になる症状がある方は、ぜひ当院へお越しください。
当院の診断・治療方針
- 当院では、脳疾患や脊髄/神経疾患の診断に問診や神経学的所見に加えてMRIを使用して原因を追求しています。MRIは放射線や造影剤を使用しないため、安全性が高く、脳実質や血管、脊髄病変が詳細に描出されます。CTで異常が見つからなかった場合でも、原因が判明することがあります。
- 原因や症状に合わせて、内服治療を用いて改善を目指します。状況によっては物理療法やリハビリが必要となることもあります。手術が必要な状態であれば、迅速に連携病院または患者様の希望される病院に紹介いたします。
- 脳腫瘍や動脈瘤などが見つかった場合でも、時期尚早で手術を行わないケースもあります。そのような場合は、当院で経過観察を行い、患者様の状態を適切に管理していきます。
- 当院では、患者様一人ひとりの症状や状態に応じた最適な治療を提供し病状の改善に向けてサポートしています。脳卒中による麻痺症状や高次脳機能障害、認知症やふらつき、片頭痛や腰痛など脳/脊椎脊髄疾患は残念ながら根治が難しく、症状や後遺症が続くこともしばしばです。そのため、当院では治療に対するアプローチを治す事だけに集中するのではなく、患者様を癒せる施設でありたいと考えております。
- 投薬による予防/再発予防治療や生活指導、心身のケアやリハビリテーション、家族や社会復帰のサポートなど患者様の生活全般をサポートするための取り組みを行っておりますので、お気軽にご相談下さい。
当院の連携病院
など
(もちろん希望される病院はどこでも紹介可能です)